2010年3月5日金曜日

耐震診断

国が行う各公共施設の耐震対策は学校の診断においては、もうそろそろ終わりに近づいているのではないかと思いますが、その他の施設ではまだ道半端といったところでしょうか。私の事務所もいくつかの学校の診断を行いました。大地震は最近でも世界各地で発生しておりますように、耐震対策は地震大国日本においては国民の命を守る重要な施策であると考えます。しかし同時に現在の財政の側面も合わせて考えなくてはならないと思います。

ここで耐震対策に充てる予算の使い方に関して少し考えてみたいと思います。先に現在行われている対策の内容を簡単に述べておきます。国が行う耐震対策は三つの業務に分かれております。第一に耐震診断、それを受けて第二の補強設計、そして第三の工事という三段階になります。このうち耐震診断と補強設計は設計業務になりますが、この部分に重複しているところがあるのではないかと私は見ています。

構造設計と言う業務は誰が行っても同じ結論が導き出されると言うものではなく、構造的な解決策はいくつかあって、それぞれの構造設計者が持つ考え方、耐力の組み立て方によって様々な結論が導き出されてきます。このような話を聞くと意外と思われるかもしれませんね。そして国が行う耐震業務では診断業務と補強設計業務との二つの業務を年度と設計者とをそれぞれ分けて別々に発注しております。

上の理由から診断業務で行われた構造計算とその考え方が、次の年度で補強設計を担当された別の設計者にそのまま引き継がれるとは限らない訳ですね。業務には責任が伴いますから担当された設計者は自分が責任を取れる方法でのみ業務を遂行します。このような現実がある限り、予算と業務の効率化という観点から国は発注方法を見直すべきではないかと私は考えます。

仮に二つの業務を一本化すると私の試算では一件(延べ床300坪程度)あたり50万円前後の予算削減が可能ではないかと見ています。全国規模では相当な金額になると思います。それでは何故一本化ができないのだろうか?恐らく国及び自治体の年度毎の予算配分の仕方に問題があると思われます。年度毎の帳尻が合えば良いという考え方ですね。それを5年、10年と続けた場合にどれだけ多くの税金を必要とするかという概念が麻痺しているのではないかと思います。これは全体システムの問題でもありますね。

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