2010年4月28日水曜日

N邸リフォーム計画

北側道路から見る

既存建物+南側の一部を増築

南側庭から見る

南側の縁側に面してDKを設ける

2010年4月22日木曜日

環境と暮らし

わが国でも最近になって漸く、環境意識を持つことの必要性が叫ばれるようになってきました。建築生産現場を例にとっていいますと、最近では住宅建築等の際に高気密、外断熱工法が高品質住宅の金科玉条のように扱われ、その普及が進んできています。そのこと事態、結果を導き出すプロセスに誤りがなければ奨励すべきことだと思います。しかし同時に住み手側が如何にその家の性能を発揮していくかという問題も考えなくてはなりません。ここでは住み手の意識が住宅のみならず、地球環境の快適性をも左右してしまうという認識を持つことの大切さについて触れてみたいと思います。

高気密は換気方式とセットであり、空調方式も併せて計画していかなければ、却っていろいろな弊害を発生することになりかねません。また外断熱は基本的には24時間空調が前提で考えるべき方式で、そうすることで初めてその性能が発揮されます。空調機のスイッチの入れ方によっては、むしろ内断熱の方が好ましい場合もあり又、地域によっても採用条件が違ってきてしまうと思います。木造とコンクリート造のように蓄熱量の違いであるとか、或いは屋根の形状にも注意した方が良いでしょう。

このようにある性能を得るには条件にあった装置を上手に採り入れ、そしてそれを上手に使いこなしていくことが大事です。然しそれだけでは地球環境を守るにはまだまだ不足であるという事例がニュースなどでも多く採り上げられています。それでは今、私たちは何を考え、何を為すべきなのでしょうか。私たちに求められているものは目前に立ちはだかる問題をテクノロジーによってのみ解決するという姿勢だけでは不足で、ライフスタイル、価値観にも及ぶ考え方の変革を迫られているかもしれません。この問題を解く糸口は性能の良いものを手に入れたから安心とか、先端技術に取残されてはいけないということだけではなくて、むしろ先人達が昔から工夫して生活していた中にそのヒントが隠されているのではないでしょうか。

環境とエネルギーと暮らし方をセットで考えるということは、自然のからくりを考えることだと思います。快適に上手に暮らしながら、且つ必要エネルギーからの廃棄物を減らすには環境意識の普及が広く求められています。火力発電、原子力発電などはそのエネルギーを産み出すために出口側に大量の、或いは危険な廃棄物を出し続けますが、この廃棄物は地球のエネルギー循環システムには元々なかったものです。風船のように閉鎖している地球では、このような人間の営みが続く限り生物が生き延びることができる環境は次々と破壊され、その触手が今も尚、増殖し続けています。それらの起因は全て、人間の行為の出口側にある廃棄物です。何かを産み出すということは、それを産み出すために使用するエネルギーからの廃棄物も同時に産み出すということです。

この原因を生み出しているのは私達人間の営みであり、これを何とかしなければならないのも人間の営みである普段の暮らしの姿勢が鍵となります。私達の生活は最早、産業革命以前に戻すことはできない。私達に必要なことは環境の仕組みにもっと目を向けることであり、何を為すかを知ることであります。その結果としてテクノロジーを上手に使用していくことではないでしょうか。環境意識を持つことはその扉であると考えます。どのような生活が理想なのか、受け継いだ地球を次の世代に、或いはどのような地球にしてバトンを渡していけるのかを真剣に考えなければならないと痛感しています。

「夏の炎天下、家が藤棚の下に建てられていたら、どんなにか涼しい住み家になることでしょう。」

「冬、昼間に受けた建物への陽射しで熱を溜め、夜になってそれを使うことができたら、どんなにか快適なことでしょう。」

2010年4月9日金曜日

住宅性能表示

住宅を含めた建築の設計を行う我々の仕事では建築の性能に関して充分に注意をしておりますが、下記に掲げるような項目をそれぞれを数値化するということは行っておりませんでした。またこれまではその制度も数値判定基準もありませんでした。特に住宅は詠み人知らずのようなケースの商品化という問題もありますので、このような制度は住宅品質の平均点を上げるという意味で有意義であると思います。 しかし性能の高さが住み易さに直結するかと問われれば、それは少し違うのではないかという気がします。この制度は飽くまでも住宅の安全性の指標及び売買時の評価基準になり得るものとして捉えた方が無難ではないかと思います。

この制度の体系と概要を下記しておきます。先ず体系的には、住宅性能表示は品確法のひとつとして制定されています。


品確法とは次の3点で構成されている。(品確法=住宅の品質確保の促進等に関する法律)
1.新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を「10年間義務化」すること。 →義務
2.様々な住宅の性能をわかりやすく表示する「住宅性能表示制度」を制定すること。 → オプション
3.トラブルを迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」を整備すること。 →1とリンク


上記1は住宅の提供者(施工者)に義務として課せられる。2は建主がオプションとして選択できる。3は1の問題が発生した時に評定に掛けることができる。


上記2の住宅性能表示制度とは良質な住宅を安心して取得できる市場を形成するためにつくられた制度で次の3つの目的を持つ。
1.各性能を数値化(等級)して比較しやすくする。
2.評価を客観的に行う第三者機関を整備して信頼性を確保する。(設計評価と建設評価)
3.表示性能は契約内容(原則)とされることで性能を実現する。

住宅性能表示の評価項目は次の10項目
1. 構造の安定                  6. 空気環境
2. 火災時の安全                7. 光・視環境
3. 劣化の軽減                 8. 音環境
4. 維持管理・更新への配慮         9. 高齢者等への配慮
5. 温熱環境                  10.防犯対策

以上が住宅性能表示の概要です。住宅を建てる場合に信頼できるパートナーがいる場合でもお互いに共有できる目標値としてその性能を掲げることができるという意味で有効であると思います。また完成されると外からは見ることができない建築中の内部を夫々の箇所においてチェックを行うというのも評価できると思います。しかし住み易さ或いは住宅の自分との相性までは数値化できないということも事実だと思いますので過度な期待は避けたほうがよろしいのではないでしょうか。

2010年4月1日木曜日

カルロ・スカルパ

Carlo Scarpa.イタリアの建築家。建築を志している人なら彼の名前を知らない人は恐らくいないでしょう。彼は1906年ヴェネチア生まれ、1978年に訪日中、仙台でなくなっています。生涯のうち、大半の仕事は古い建物のリノベーションに費やされています。創造的な修復を行い職人的・工芸的な建築家と言われています。
右の写真はカステルヴェッキオ美術館で14世紀の古城を再生しています。場所はイタリア北東部ヴェネト州にあるヴェローナと言う町です。ロミオとジュリエットで有名なジュリエットの家から歩いていける距離にあります。

左のスケッチはヴェネチアからバスで一時間ほどの町にあるカルロ・スカルパ自身のオリジナル設計による最後の作品となったブリオン家の墓地にある建物郡の一画にある墓石です。彼自身の墓地もここに隣接しています。いくつかの建物が芝生の庭を囲み、それぞれを回廊でつないでいる。私たちが行った日は偶然にも彼の法事のセレモニーが行われていました。

庭に腰を下ろすと書籍で見ていた有名なシーンに接する事ができます。彼は日本の数奇屋建築に影響されていたと言われておりますが各所に独特のディテールを生み出しておりました。